2010年9月9日木曜日

FOX Glacierの悲劇

VT250F(G)での旅で忘れ得ない思い出が、夫婦でよく話している「FOX Glacierの悲劇」だ。
FOX氷河はNZの南島西海岸に位置する氷河で

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南島観光では目玉の一つ。
LAKE Wanakaのキャンプ場を早朝に発って、確かお昼頃到着だった記憶があるけど、何分23年も前の記憶じゃ定かじゃない。
HaastHWからFOX Glacierへの取付道路に入ったところで悲劇は起こった。


当時の取付道路は未舗装で、前輪で跳ね上げたソコソコ大きな石がVTのオイルパンにヒット。そのままオイルパンに取り付けてあったフィンごとオイルパンの一部を捥ぎ取っていってしまった。
当然の様にオイルはダダ漏れ。
直ぐに持って行かれたオイルパンの一部だった金属片を回収して、HaastHWに有ったガソリンスタンドに飛び込んだものの、ほとんどオイルは無い状態。走行不能であることは間違い無しだ。


とにかくガソリンスタンドで売っている数少ないケミカルや接着剤の中から、使えそうなものを入手して修理に取り掛かったもののどうにもならない。
オイル塗れじゃ接着も出来ないじゃないか。
仕方が無いので兎に角オイルが抜けきるまで待って、ブレーキパーツクリーナーで拭き取って瞬間接着剤で破片を無理やり接着。その上から水で溶いた石鹸を擦り付けてオイルを充填。
走れるのか…?


とにかくアイドリング状態なら漏れも止まったようなので、一番近い町Franz Josefまで走る事にした。
日が暮れてしまう…、ましてこんな所で旅を終えたくないと必死だった。
カミさんにはタンデムシートからオイルの漏れが酷くなっていないかチェックしてもらうようにして何とかFranz Josefまでたどり着いたものの、着いたころには漏れた分の補充用で予備に買ったオイルも全て使い果たしていた。絶望的だった。
辺りも暗くなり始め、止む無く飛び込んだモーテル。不覚にも名前は忘れてしまったが、ココに旅の神様はいた。
ココにいたるまでの事情をモーテルの気さくなオーナーに話すと…チョッと着いて来いと促され、ついていった先には古い車のレストアをしているモノや、ピカピカのクラッシックカーがあるではないか。
そう、オーナーの趣味は古い車のレストアでガレージの中にはありとあらゆる工具類がぎっしり、まさに工場だ。


その夜、僕は自由に使っていいと言われた工場内で、一人アルミ片を加工して、教えられるまま溶接を行い、漏れ止めに熱硬化樹脂を充填してメデタク修理完了。
翌日から又、改めてNZの旅を続けることが出来たのだ。
大切だったオーナの名前とモーテルの名前を記録した旅の記録ノートが、度重なる転居で遺失してしまい、今は記憶だけになってしまい後悔するばかりだけど、オーナーへの感謝の気持ちは今でも忘れない。


あの気さくなオーナーがいなければ、きっと旅を続けることも出来ずにタダタダ恨み言だけ言っていたかもしれない。
旅の空の下には、救いの神が必ず居ると信じられるようになった、そんな思い出。

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